ご記憶の方も多いかと思いますが、昨年、政治資金の私的流用を疑われてマスコミに大々的に報じられた自治体首長がいました。
これに対し首長は、自分で雇った弁護士を「第三者」と称して調査を行わせた結果
「シルクの中華服で書道をすると筆がスムースに滑らせることができる。首長は具体的で説得力のある説明をした」
との報告書が出来上がりました。
弁護士は大真面目に正当性を主張したけれど、余計に有権者から見放される結果となり、首長は任期途中での辞任と相成りました。
僕はこの一連の喜劇(?)にまつわる首長やその弁護士の論理を「マスゾエ中華服状態」と名付けてみました。
弁護士の仕事とは、依頼人の利益を何が何でも守り、無理が無理でも依頼人は何も悪くない、という筋書きを主張して裁判官にぶつけて、やはり同じように完全に非がないと主張する相手方との落としどころを探ることにあるのであって、その目的の為ならば、都民がどんなに眉をひそめようが「マスゾエ中華服状態」は実に正しい行動なのです。弁護士は有罪を避けるために裁判官の顔色だけを窺って作文に勤しむのであって、都民のことなんて最初から見てはいないのです。
さて、風間烈・同窓会会長は代理人・池田昭弁護士(第二東京弁護士会所属, 弁護士登録番号 15626, 池田法律事務所, 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-8-6 宮益坂STビル9階, Tel: 03-3406-4947, Fax: 03-3406-4948)を通じて
「名刺などはたまたま入手したので個人情報に該当しない、よって管理をしない」
「同窓会は個人情報保護法が及ばない組織なので、個人情報の定義は同窓会が一方的に行う」
「同窓会が『会員が情報開示に同意した』と一方的な判断をすると、その判断をもって本人に事前確認をしないまま無期限無条件に好き勝手に利用する」
と主張されています(要旨)。
「同窓会では、把握している会員の情報の取り扱いには十分注意しています」と主張しながら、個人情報管理規程が存在しないのはいかにも奇妙ですが、同窓会が時と場合に応じて好き勝手にいくらでもルールを変えたいのであれば、その方が都合が良いのでしょう。ゴールポストの位置や土俵の大きさを思うがままに変えて、いつでも同窓会が勝つように試合を展開できるわけですから。
また、「注意しています」というのはいわば「ガンバります」という期待や願望、精神論を述べているだけで「どういう基準を持って管理し漏洩を防いでいる」という牽制機能の説明や「漏洩をしません」というコミットメントを示しているのではありません。
しっかり管理してくれていると思っていた相手に
「俺はガンバると言っただけだ!勝手に思い込んだほうが悪い!」
と逆ギレすることも可能です。
いやはや、全く隙のない百点満点のマスゾエ中華服状態と言えるでしょう。
そして実際に、就職懇談会の講師役たちは、学科や在校生の役に立ちたいと思って、自分の仕事を休んで参加したら、主催者たる同窓会からは礼を言われることもなく、それどころか個人情報を勝手に開示漏洩された挙句、自分が開示に同意してもいないことを同意したと一方的に決めつけられ、お前の情報は同窓会がたまたま手に入れたものだから管理はしない、好き勝手に使うぞと弁護士まで出てきて同窓会会長に凄まれています。
このマスゾエ中華服状態に直面した当事者や、周囲で眺めるほかの卒業生たちが、これから先、このような運営をする同窓会に進んで協力したくなると、同窓会は本気で考えてこのような主張をなさっているのでしょうか?
先に述べた通り、百点満点のマスゾエ中華服状態というのは、依頼人に全く非がないと裁判官に主張する為だけの論理立てを、無理が無理でも弁護士が知恵を絞ってこしらえたものであって、依頼人である同窓会組織の保身以外のことに考えが及んではいないのではないかと考えます。そうでなければ、ソフィア会(上智大学全体の同窓会組織)や上智大学が定める、国の法律(いわゆる個人情報保護法)に準じた規定を採用せず、フランス語学科同窓会が誰にも伝えないまま勝手に個人情報を定義して振りかざすようなことはしないでしょう。
風間烈・同窓会会長と池田昭弁護士(第二東京弁護士会所属, 弁護士登録番号 15626, 池田法律事務所, 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-8-6 宮益坂STビル9階, Tel: 03-3406-4947, Fax: 03-3406-4948)は共に、過去にソフィア会の代議員や常任委員を歴任されてきたようですが、それほどのソフィア会の幹部だった人物たちが、ソフィア会の下部組織であるはずのフランス語学科同窓会には「個人情報保護に関するソフィア会の基本方針」を援用せず、ゴールポストや土俵を変えまくる独自の施策を振りかざし、会員にいつその同意を得たのか、同窓会としてどのように機関決定を経たのかも明らかにしないまま運用して、自分たちは何も悪くないと主張されておられることになります。
それを誰も不思議だとは思わないのでしょうか。少なくとも僕にはとっても不思議ですが。
ところで、そこまで隙のないマスゾエ中華服状態が成立するにはひとつの条件があります。それは、主張する内容が真実である必要があるということです。
当たり前のことのようですが、どんな屁理屈、無理矢理の論理であっても、ウソがなければ成立するかも知れませんし、ウソのない真実のストーリーである限りは、解釈の相違として裁判官は聞く耳をもってくれる可能性がでてきます。そして反対に、少しでも説明や前提条件に本当でないこと、虚偽が含まれていると、説明のあらゆる箇所に疑念を惹起してしまい、信憑性をあっという間に失って裁判で完敗、社会的信用も失うという、弁護士にとっては最も避けるべき結末を迎えることになります。