雑談

【特集】上智大学が国際教養学部の林道郎教授を懲戒解雇処分 (2)

(承前)

僕がこの事件を知ったのは、令和3年(2021年)9月20日付の『日刊ゲンダイDIGITAL』の記事でした。

Source: 論文指導をラブホで…美術評論界トップの上智大教授が肉体関係をもった教え子から訴えられていた
 
記事によると、

  • 妻帯者である林道郎教授が、教え子の学生(以後、本稿ではA子さんとします)に手を出した
  • 論文指導と称する1対1のセッションは歌舞伎町のラブホでも行われた
  • 林道郎教授の不貞行為は夫人の知るところとなり、夫人はA子さんを損害賠償請求で訴えA子さんが敗訴
  • A子さんが林道郎教授を相手取り損害賠償請求を求める

という経緯があった模様です。

同紙の取材に対して、上智大学は
「本件については個人間のことと認識しておりますので、大学としてコメントは控えさせていただきます」(出典・上記記事)
と回答したとのことで、この他人事のような物言いがネット界隈を中心に大きな批判を呼んだとも聞きました。

単純に、ふたりが男女の仲になることや自由恋愛の果ての痴話喧嘩を大学が問われたというのならば、そのような回答もありえなくはないのかも知れません。

しかしながら、門外漢のいわば素人の僕でも想像してしまうのは、ふたりが上智大学の同じ研究室の教授と学生~研究生という間柄で、単位、学位、論文の査読といった、学生にとっての生殺与奪を握る指導教官の立場にある林道郎教授が、その優越的立場を利用したのかしなかったのか、上智大学教授という笠を着てA子さんに何をして何をしなかったのか、拒めば研究者としてのキャリアーが絶たれるかも知れない情況で、A子さん自身にどこまで選択の余地があったのかなかったのか、という点。

上智大学側のコメントは、林道郎教授が裁判所に提出したとされる
「原告と被告は指導教官と学生という立場ではあったが自立した成人同士の自由恋愛をしていたに過ぎない」
「2人の関係が対等であった」
「双方合意」
(出典・同)
という主張を一方的になぞっているように、僕には思えました。

しかしながら、A子さんは訴状において
「被告は、原告の指導教官の立場にありながら、原告に対し被告と性的関係を持つように繰り返し働きかけ、原告に対し性交渉を含む交際を余儀なくさせた」(出典・同)
と文字通り訴えていて、この一丁目一番地に一切触れないまま、「個人間のこと」とのたまい突き放そうとするのは、教育機関として、というよりもいい歳した社会人としては、いかにも拙劣なリアクションという気がします。

取材を受けた時点で事実関係が詳らかでないというのであれば、それを正直に言えば良いと思うのですが。
分かりませんというのも立派な回答です。分からなければ調べればよいのですから。
また、既に調査など行った上での回答だというのならば、調査を行った事実なり、林道郎教授側の言い分を全面的に採用するに足る結論に至った旨を明らかにすればよいのでないでしょうか。

肩書も役職もある年上の男性の言い分が無条件に通って、若い女性の研究生の申し立ては一切顧みられることがない、いわば泣き寝入りを強いるのが上智大学の方針だと言わんばかりの初期対応は、内向きな論理としてはきわめて正直なのかも知れませんが、対外的にそれをして憚らないというのは、さすがに批判を受けても仕方がないという気がしてしまいます。

この対応を見た我が母校上智大学の学生たちは、教授にどんなパワハラ・アカハラをされたとしても、大学側はまともに取り合ってくれない、教授側の肩を持ってもみ消されるだけだ、という印象を持ってしまわないでしょうか。
  
(文責・水野)

(つづく)

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